費用をかけて作ったシステムが、納品から数ヶ月後には誰にも使われていない。こうした事態が、日本中の中小企業で静かに起きています。
「使われないシステム」の問題は、単なる費用の無駄にとどまりません。現場の「やっぱりシステムは難しい」という不信感が生まれ、次のIT化への挑戦を数年単位で遅らせます。そして多くの場合、経営者は現場でシステムが使われていないことに気づかないまま、保守費用だけを払い続けます。
なぜこうなるのか。使われないシステムが生まれる会社には、共通したパターンがあります。
共通点1:現場を置き去りにして導入を決めた
最も多いパターンです。経営者や管理部門が「このシステムを入れる」と決定し、現場の社員に「来月から使ってください」と通達する形で導入が進みます。
現場からすれば、自分たちが関与しないまま決まったシステムを使わされる形になります。「なぜこのシステムにしたのか」「自分たちの意見は聞いてもらえなかった」という不満が、最初から潜在しています。
さらに問題なのは、現場の実態を知らないまま要件を決めたため、完成したシステムが実際の業務フローと噛み合っていないことが多い点です。「このシステムを使うより、今まで通りExcelでやった方が早い」という状況が生まれると、現場はすぐに元のやり方に戻ります。
使われるシステムを作るためには、導入を決める段階から現場の社員を巻き込み、「自分たちのために作られたシステム」という感覚を持ってもらうことが不可欠です。
共通点2:導入後のフォローがゼロだった
システムが納品された日に簡単な説明会を開いて、あとは「使ってください」で終わり——こうした会社では、システムの定着率が極めて低くなります。
どんなに使いやすいシステムでも、慣れるまでには時間がかかります。操作方法が分からなくて困ったとき、すぐに聞ける人がいない環境では、社員はシステムを使うことを諦めます。「また今度覚えよう」と思っているうちに、気づけば誰も使わなくなっています。
導入後に必要なのは、継続的なフォローアップです。操作に不安がある社員への個別サポート、よくある質問をまとめたFAQの整備、定期的な利用状況の確認と問題点のフィードバック——こうした取り組みを、最低でも導入後3ヶ月間は続けることが定着率を上げる鍵です。
共通点3:「使わなくても誰も困らない」環境だった
導入したシステムを使わなくても、従来のやり方で業務が回る状況が続いている場合、人は必ず楽な方を選びます。
「紙の伝票でもExcelでも業務はできる。でもシステムも一応ある」という状態では、システムが使われないのは当然の結果です。人間は慣れ親しんだ方法を変えることに抵抗感を持ちます。新しいシステムが「使わなければならない理由」がなければ、旧来の方法に戻るのは自然な行動です。
システムを定着させるためには、「このシステムを使わないと業務が完結しない」という状況を意図的に作ることが有効です。たとえば、報告書の提出をシステム経由のみに統一する、承認フローをシステム上でしか行えないようにする——こうした運用ルールの変更が、定着率を劇的に上げます。
共通点4:操作が難しすぎて、誰も覚えられなかった
システムの操作性が悪く、覚えるコストが高すぎると、現場での定着は期待できません。
特に中小企業では、ITに不慣れな社員が多いことがあります。「パソコンは苦手」という社員が多い職場に、複雑な操作が必要なシステムを導入しても、使いこなせる人が限られてしまいます。
この問題の根本原因は、要件定義の段階で「誰が使うか」を正確に伝えていなかったことです。「社員全員が使う」という前提でシステムを設計するなら、最も ITリテラシーが低い社員でも直感的に操作できるレベルの使いやすさが求められます。開発会社に「ITに不慣れな60代のパート社員が主なユーザーです」と伝えていれば、それに合わせた画面設計になったはずです。
共通点5:「入れること」が目的になっていた
「DXを推進しなければならない」「補助金が使えるうちにシステムを入れておこう」——こうした動機でシステムを導入した会社では、「入れること」が目的化してしまいます。
本来システムは、「業務上の課題を解決する手段」です。しかし「入れること」が目的に
と、どんな課題を解決したいのか・誰がどう使うのかという本質的な問いが後回しになります。その結果、課題と噛み合わないシステムが完成し、誰も使わないまま放置されます。
補助金を活用してシステムを導入すること自体は賢い判断です。しかし「補助金が出るから入れる」ではなく「この課題を解決するためにシステムを作り、費用を補助金で賄う」という順番で考えることが重要です。
共通点6:経営者が使わなかった
意外に見落とされがちですが、非常に影響が大きい要因です。
経営者自身がシステムを使わず、現場にだけ「使え」と言っている状況では、現場のモチベーションは上がりません。「自分たちだけやらされている」という感覚が、システムへの抵抗感を生みます。
逆に、経営者がシステムを積極的に使い、「このシステムのデータを見て経営判断をしている」という姿を見せることで、現場の「自分たちが入力したデータが実際に役立っている」という実感につながります。システムの定着には、経営者のコミットメントが思った以上に大きな影響を与えます。
「使われないシステム」にしないための3つの原則
原則1:現場を最初から巻き込む
導入を決める段階から、実際に使う現場の社員を要件定義に参加させましょう。「自分たちが関わって作ったシステム」という当事者意識が、定着率を大きく左右します。
原則2:導入後3ヶ月は手厚くフォローする
システムが定着するかどうかは、導入後の最初の3ヶ月で決まります。この期間に操作方法のサポート・利用状況の確認・問題点のフィードバックを繰り返すことが、長期的な定着につながります。
原則3:「使わなければならない理由」を作る
新しいシステムを使わなくても業務が回る状態を続けることは、定着の最大の敵です。業務フローをシステム中心に再設計し、「このシステムを使わないと業務が完結しない」という環境を作ることが、最も確実な定着策です。
まとめ:システムは「入れた日」ではなく「使われ続ける日々」が本番
システム開発の成功は、納品された日ではなく、現場で使われ続けている状態になって初めて達成されます。どれだけ優れたシステムでも、使われなければ意味がありません。
「システムを入れたいが、使われないシステムになるのが心配」「過去に導入したシステムが使われていない、どうすればいいか」——こうした悩みも、シスナビでは丁寧にヒアリングして最適な対応策をご提案します。まずはお気軽にご相談ください。