「お願いしていた開発会社が突然連絡を取れなくなった」「担当者から『会社が閉まることになった』と連絡が来た」——こうした事態は、決してドラマの中だけの話ではありません。

中小の開発会社ほど経営基盤が不安定なケースがあり、発注者が気づかないうちに経営が悪化していることもあります。開発会社の倒産・廃業は、発注者にとって突然降りかかる深刻なリスクです。

この記事では、開発会社が倒産・廃業した場合に何が起きるか、そしてどう備えればいいかを具体的に解説します。

開発会社が倒産・廃業すると何が起きるか

問題1:開発中のシステムが宙に浮く

最も深刻なのは、開発途中でプロジェクトが止まることです。完成間近だったとしても、開発会社がなくなれば作業を続ける人間がいなくなります。

さらに困るのが、システムの「中身」を把握している人間が誰もいなくなるケースです。コードはあっても、それを読み解いて続きを作れるエンジニアがいなければ、別の開発会社に引き継ぎをお願いするのも困難になります。

問題2:支払ったお金が戻ってこない

着手金や中間金として前払いしていた費用は、開発会社が倒産した場合、ほぼ戻ってきません。倒産手続きの中で債権者として名乗り出ることはできますが、実際に回収できる金額はごくわずかか、ゼロであることがほとんどです。

たとえば、300万円の開発費用のうち150万円を着手金として支払った直後に開発会社が倒産した場合、その150万円は実質的に失うことになります。

問題3:稼働中のシステムが突然止まる

すでに納品・稼働しているシステムの保守を委託していた場合も深刻です。サーバーの管理・障害対応・セキュリティ更新などを担当していた会社がなくなると、これらの対応が一切行われなくなります。

特に危険なのがサーバーの契約です。開発会社名義でサーバーを契約していた場合、会社の消滅とともに契約が失効し、稼働中のシステムがある日突然止まるという事態が起きることがあります。業務に直結するシステムがこの状態になれば、会社全体の業務が止まります。

問題4:ソースコードや設計書が入手できなくなる

システムのソースコード・設計書・仕様書などの成果物が、開発会社のサーバーや担当者のパソコンの中に眠ったままになるケースがあります。会社がなくなれば、これらのデータにアクセスする手段がなくなる可能性があります。

著作権が発注者に帰属していても、現物のデータを手に入れられなければ意味がありません。

なぜ開発会社の倒産・廃業は気づきにくいのか

発注者が開発会社の経営状況を把握するのは難しいです。決算書を公開していない非上場の中小企業がほとんどであり、外から見ていると経営が悪化していることに気づきにくいです。

むしろ、倒産直前の兆候として現れやすいのは次のようなサインです。

担当者からの連絡が遅くなる、質問への返答が曖昧になる、進捗報告が来なくなる、担当者が頻繁に変わる、「会社の事情で少し遅れる」という説明が続く——こうしたサインが重なってきたときは、注意が必要です。

倒産・廃業リスクを減らすための事前対策

開発会社の倒産リスクは完全にゼロにはできません。しかし、事前に準備しておくことで被害を最小限に抑えることはできます。

対策1:ソースコードを定期的に受け取る

開発完了を待たずに、開発途中のソースコードを定期的に受け取る取り決めを契約書に盛り込みましょう。月次や工程完了のタイミングで成果物を受け取っておけば、万が一の際に他の開発会社に引き継ぎやすくなります。

GitHubなどのバージョン管理サービスを使っている場合は、発注者自身もアクセスできる権限を持っておくことが重要です。「完成したら渡します」という約束だけでは、万が一のときに成果物を受け取れないリスクがあります。

対策2:前払い金を最小限にする

契約時の前払い金(着手金)の割合を最小限に抑え、工程完了ごとに支払う分割払いにしてもらいましょう。「要件定義完了時に○%、設計完了時に○%」というように、成果物の確認と連動した支払いにすることで、倒産時の損失を抑えられます。

着手金ゼロを求めることは現実的ではありませんが、全体の30%以内に抑えるのが一般的な目安です。

対策3:サーバー契約を自社名義にする

システムを動かすサーバーの契約は、必ず自社名義で行うことを徹底してください。開発会社名義でサーバーを契約していると、会社がなくなった際に契約が引き継げなくなるリスクがあります。

AWSやGoogle Cloudなどのクラウドサービスは、自社でアカウントを作成し、そこに開発会社をゲストとして招待する形で運用するのがベストプラクティスです。

対策4:ドキュメントを整備してもらう

仕様書・設計書・操作マニュアルなどのドキュメントを、開発と並行して整備してもらうことを契約に盛り込みましょう。ドキュメントが整っていれば、別の開発会社への引き継ぎが格段にスムーズになります。

「ドキュメントは納品時にまとめて提供」という約束だけでは、倒産した場合にドキュメントを受け取れない可能性があります。工程ごとに成果物として受け取ることが重要です。

対策5:開発会社の経営状況を定期的に確認する

取引開始前に、開発会社の設立年数・資本金・従業員数・過去の取引実績などを確認しましょう。設立間もない会社や、従業員が極端に少ない会社は、経営基盤が弱いリスクがあります。

また、取引が始まってからも、担当者の対応が変化していないか、会社の状況に不自然な点がないかを定期的にチェックすることが大切です。

万が一、倒産・廃業が発覚したらすぐにすべきこと

開発会社の倒産・廃業が分かった場合、次の行動をできるだけ早く取ってください。

まず、ソースコードと設計書の確保を最優先にします。担当者や管理者に連絡を取り、成果物の引き渡しを求めましょう。倒産手続きが始まる前に動くことが重要です。

次に、サーバーの状況を確認します。開発会社名義でサーバーが契約されている場合、契約の引き継ぎや移行の手続きを急いで進める必要があります。

並行して、支払い済みの費用の回収可能性を弁護士に相談します。倒産手続きの中で債権として申告できるかどうかを確認し、可能な範囲で対応します。

最後に、別の開発会社への引き継ぎを検討します。入手したソースコードやドキュメントをもとに、続きの開発・保守を引き受けてくれる会社を探します。

まとめ:倒産リスクは「起きてから考える」では遅い

開発会社の倒産・廃業は、発注者にとって突然降りかかるリスクです。しかし、契約前・開発中の段階で適切な対策を取っておくことで、被害を大幅に抑えることはできます。

「ソースコードを定期的に受け取る」「サーバーを自社名義にする」「前払い金を最小限にする」——これだけでも、万が一の際の損失は大きく変わります。

「今の開発会社との契約内容を見直したい」「リスク対策として何をしておくべきか相談したい」という段階からでも、シスナビでは丁寧にサポートしています。まずはお気軽にご相談ください。